教会の言葉
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2月のメッセージ
2019-03-15
「互いにもてなし合う」
「イエスは十二人を呼び集め、あらゆる悪霊に打ち勝ち、病気をいやす力と権能をお授けになった。・・・『どこかの家に入ったら、そこにとどまって、その家から旅立ちなさい。』」(ルカによる福音書9章1節、4節)
牧師 藤田浩喜
主イエスは、十二人を町や村に派遣されました。それは今日でいう伝道のために派遣されたのですが、その内容は「神の国を宣べ伝え、病人をいやす」(2節)ためでした。それは主イエスご自身が行っておられたことを継承することであり、それが可能なように、「あらゆる悪霊に打ち勝ち、病気をいやす力と権能」(1節)が、主イエスから授けられたのでした。今日の教会も主イエスからこの世に派遣されています。病気のいやしは、現代では教会の担う業ではないかもしれません。しかし人々を主イエスの御言葉とその力によっていやし、健やかにする使命を教会が担っていることを忘れてはならないと思います。派遣された十二人は、何も持っていくことが許されませんでした。「旅には何も持って行ってはならない。杖も袋もパンも金も持ってはならない。下着も二枚は持ってはならない」(3節)という徹底ぶりです。これは十二人だけに命じられたことであるかもしれません。また、主イエスも後の箇所では、財布や袋はもちろん、剣を持つことも許しておられます(ルカ22:36以下)。しかし、いずれにしても携えていくべきものは、私たちを遣わされた神への信頼です。この主への信頼がなければ、どんなに完璧な装備を整えたとしても、その任に耐えることはできないのです。また、主が何も持たずに行きなさいと言われたのは、派遣先で迎え入れられる見通しがあったからだとも言われます。もちろん迎え入れてくれない家もあったでしょうが、神の御業のために旅する者を大切にもてなすという習慣が、この時代には生きていたのです。そういえば日本でも、四国八十八箇所巡りにおいて、お遍路さんに食べ物や飲み物を供する習慣は、今も沿道の町々の人々の中に生きていると言われます。それによって同じ信心で結ばれたお遍路さんとその地の人々の絆が強められ、豊かにされていくのです。このことは今日の教会でも同じでしょう。信仰は神の国をめざして、地上を旅することです。その旅には様々なことが起こります。辛いこと、悲しいこと、思いもかけないことも起こります。そのような旅を続ける一人一人であればこそ、お互いがもてなし合う心を持つことによって、信仰者同士の絆が強められ、真に豊かな共同体が創られていくのです。(2019年2月)