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教会の言葉

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12月のメッセージ
2012-01-20
クリスマス ― 神の救いの現実   
                西宮中央教会牧師 藤田浩喜

ルカによる福音書の誕生物語には、人間社会の現実にもてあそばれ、拒絶される若い家族のことが描かれています。ヨセフとマリアが結婚して間もなく、ローマ帝国の全土には住民登録の勅令が出されます。住民登録とは、以前の聖書では「人口調査」と訳されていましたが、ローマ帝国が徴税と徴兵に用いる台帳を作るために行われました。この勅令によって、領土内の人々はごく短期間のうちに、自分の属する家系の出身地に向かわなくてはなりませんでした。ローマ帝国の強大な権力の下で、人々は風にもてあそばれる木の葉のように、その歩みをもてあそばされました。若いヨセフも臨月のマリアを連れて、ベツレヘムまでの約百キロの道のりを進んで行かなくてはならなかったのです。マリアの体を気遣い、盗賊の出没に怯えながら、二人は不安な旅を続けていったのです。それだけではありません。ベツレヘムに着いても、臨月を迎えいつ子どもが産まれるか分からないこの家族を、泊めてくれる宿屋は見つかりません。ベツレヘムに普段住んでない人々が突然住民登録のためにやって来て、数少ない宿屋は満員だったのかもしれません。あるいは、いつ子供が生まれるかも知れないお客を泊めることを宿屋が拒否したのかも知れません。いずれにしても、若いこの家族は人間社会の現実に翻弄され、冷たく拒絶されていたのです。これはまさに、私たちの多くが経験することでもあります。しかし、ルカによる福音書はこのような人間の現実にもかかわらず、いなそのような現実を通して、神の御心が成就したことを語っているのです。若い二人はローマ皇帝の勅令に翻弄されているかに見えます。しかしこの勅令によって、神の約束された救い主がダビデ王がの家系から誕生することが明らかにされます。ローマ皇帝もまた、神の救済計画を実現するための道具とされているのです。また、若い家族は体を休める宿屋を見つけることができませんでした。彼らは閉め出され、家畜小屋の飼い葉桶に生まれたばかりの赤ちゃんを寝かさなくてはなりませんでした。しかしこのことによって、この世界に誕生された救い主が人間の味わう、どんな悲惨さをもご存じであり、その現実を受け留めてくださる方であることがはっきりと示されているのです。人間社会の非情な現実は、私たちを翻弄し、拒絶するかもしれません。しかし神の救いの現実は、それを超えて実現していくのです。(2011年12月)

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