教会の言葉
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真理は汝を自由にする
牧師 藤田浩喜
「イエスは、御自分を信じたユダヤ人たちに言われた。『わたしの言葉にとどまるなら、あなたたちは本当にわたしの弟子である。あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。』」(ヨハネによる福音書8章31~32節)
先日『グローリー 明日への行進』という映画を観ました。アメリカ公民権運動の指導者であるマルティン・ルーサー・キング牧師が、1965年3月7日アラバマ州のセルマから州都モンゴメリを目指して行った行進をクライマックスとする映画です。今も上映中なので詳しい紹介は控えますが、魂が揺さぶられるような作品でした。2014年の作品ですが、この映画が作られたのは、今も繰り返される白人警官による黒人青年射殺事件などのアメリカの現実が背景にあるようです。キング牧師たちを中心とする非暴力抵抗運動によって、ジョンソン大統領政権下の1964年7月2日に公民権法(Civil Rights Act)が制定されました。これにより、建国以来200年近くの間アメリカで施行されてきた法の上における人種差別が終わりを告げることになりました。また、キング牧師もその運動が評価され1964年10月14日にノーベル平和賞を受けています。しかし、各州のレベル、特に南部の諸州では法の下の平等は建前であり、市民権の基礎である「有権者登録」をしようとすると、嫌がらせを受ける、命を奪われるような事例が頻発していたのです。キング牧師がセルマ行進を決行したのも、「有権者登録」をした黒人たちをアラバマ州知事に保護させようとしたためでありました。『グローリー 明日への行進』を観て痛切に感じたのは、本当に意義のあることを成し遂げようとするためには、気の遠くなるような道のりを進んで行かなくてはならないということです。次々に立ちはだかる困難を、粘り強く、あらゆる手立てを尽くして克服していく必要があるのです。そして、その場合に何よりも大切なのは、「真理」であるイエス・キリストに、依り頼んでいくことです。ヨハネによる福音書が証ししているように、私たちが依り頼む「真理」は生ける神の子イエス・キリストです。このお方を信じ、このお方に従い、このお方の御言葉に養われることによって、私たちは何ものにも奪われない自由を得ることができます。このいつも新しく湧き上がる魂の自由さがあるからこそ、私たちは諦めることなく困難な道を進んで行くことができるのです。「あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする」。この御言葉を生き切った人がキング牧師でありました。(2015年7月)