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教会の言葉

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5月のメッセージ
2011-06-20

未来へ思いをつなぐ者                         
          西宮中央教会牧師 藤田浩喜         

「こうしてわたしは、自分が走ったことが無駄でなく、労苦したことも無駄ではなかったと、キリストの日に誇ることができるでしょう」
 (フィリピの信徒への手紙  2章16節)
日曜日の午後9時からTBS(関西では毎日放送)で、「JIN−仁−」というドラマをしていますが、皆さんはご覧になっておられるでしょうか。ひょんなことで現代から幕末にタイムスリップした南方仁(大沢たかお)は、橘咲(綾瀬はるか)らの医者仲間と『仁友堂』という養生所を立ち上げます。仁は21世紀の西洋医学の知見や医療技術を生かして、当時は不治とされていた病気を癒し、脚気によく効くビタミンを多く含んだお菓子などを考案して、江戸の人々のために尽くします。そして幕末という激動の時代、坂本竜馬や勝海舟、西郷隆盛らとの出会いもあり、大きな歴史の流れに、自らも身を投ずることになるのです。
 5月1日(日)放送の第3話では、とても心に残るシーンがありました。仁は自分がいつ現代に引き戻されるか分からないけれども、できれば幕末に留まりたいと考えるようになり、咲に一緒になってほしいとプロポーズします。咲は仁に思いを寄せていましたが、本心を隠して申し出を断ります。そして彼女は、自分の願いは仁と一緒になることではなく、仁友堂を共に盛り立てていくことだと言います。そして続けて、こんなふうに言うのです。「わたくしがいつも寂しく感じておりましたのは、南方先生の時代にわたくしがいないということです。でもわたくしは、仁友堂を一生懸命盛り立て、先生の時代まで仁友堂を残したいと思います。そうすれば、わたしたちが一緒に生きて働いた歳月が、決して消えてなくなることはないからでございます。」私はこの咲の言葉にとても感動しました。もともと違う時代に生きる自分と仁が、歴史の制約を超えて一緒になれないことを、咲はわきまえています。しかしそのような超えがたい状況の中で、なお最善を尽くして、自分の切なる思いを自分の生きていない未来へ送り届けようとする。その思いが、とても美しく貴いものに感じられたのです。
 冒頭の聖句は、使徒パウロが彼の設立したフィリピの教会に宛てた手紙の一節です。パウロはフィリピの信徒に、自分が去った今も「従順に、恐れおののきつつ自分の救いを達成するように努めなさい」と励まし勧めています。彼は獄中にあり、いつ処刑されるか分からない状況にありましたが、自分の宣べ伝えた福音が、未来につながり継承されていくことだけを願って、今という時を伝道者として生き切った信仰の先達であったのです。全てのことを無駄になさらない主に、私たちも委ねていきましょう。(2011年5月)

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