本文へ移動

教会の言葉

バックナンバー

8月のメッセージ
2017-09-15
『剣を放棄した生き方』
「そのとき、イエスと一緒にいた者の一人が、手を伸ばして剣を抜き、大祭司の手下に打ちかかって、片方の耳を切り落とした。そこで、イエスは言われた。『剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる。』」
 (マタイによる福音書26章51~52節)   牧師  藤田浩喜
 
少し前に「ハクソー・リッジ」(メル・ギブソン監督)という映画を観ました。ハクソー・リッジとは、第二次世界大戦の激戦地・沖縄の前田高地のことです。この地の約150mの断崖絶壁が、「のこぎり」のように険しく切り立っていたところから、苦戦を強いられたアメリカ軍がこのように呼びました。この映画は実話に基づいています。主人公のデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)はセブンスデイ・アドベンティストの信徒でしたが、家庭での苦しい経験から生涯武器を取らないことを心に誓っていました。しかし、第二次世界大戦では多くの同胞が、祖国と自由主義世界を守るために命を捧げています。そこでデズモンドは銃も剣も持たない衛生兵として入隊するのです。「戦争とは人を殺すことだ」と考えている上官や同僚は、デズモンドを蔑み苛めます。しかし彼は、訓練の時でさえ銃を取ることを拒否したのです。1945年4月デズモンドの属する部隊は沖縄のハクソー・リッジを攻略しようとします。切り立った150mの崖をよじ登り、台地を前進しようとします。すると台地の地下に洞窟を掘って隠れてきた日本兵が、銃と銃剣をもって次々に襲いかかってきます。また、台地に造られたコンクリートの建物からは、日本の狙撃兵が前進するアメリカ兵めがけて銃弾を浴びせかけます。そこではまさに、地獄絵のような凄惨な戦いが繰り広げられたのです。その凄まじい戦闘の中で、衛生兵デズモンドがしたのは、殺すことではなく助けることでした。彼は死と隣り合わせの極限状態の中で、傷ついた仲間たちを探し、もやい結びのロープを使って、ハクソー・リッジの下に運び降ろしました。撤退命令が出ても救出を止めませんでした。こうしてデズモンドは、たった一人で75人もの命を救ったのです。しかも彼は、重傷を負った日本兵に手当を施したことさえあったのです。この実話は、人の死の貴さ・かけがいのなさへの感覚を、不意打ちのように、呼び覚ましてくれます。私たちは同じキリスト教信仰を持つ者として、もっともらしい戦争肯定論を打ち破るためにも、人の命のかけがいのなさを中心に据えて、議論し、訴えていきたいと思います。「剣を取る者は皆、剣で滅びる」との御言葉を、心に刻みつつ。    
 
(2017年8月)

日本キリスト教会
西宮中央教会

〒662-0832
兵庫県西宮市甲風園
2丁目4番15号
TEL.0798-67-4347
FAX.0798-67-4561

TOPへ戻る