教会の言葉
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11月のメッセージ
2019-12-13
『静かにささやく声』
牧師 藤田浩喜
「火の後に、静かにささやく声が聞こえた」
(列王記上19章12節)
預言者エリヤは、450人のバアルの預言者と対決し、見事に勝利を収めました。これでアハブ王も悔い改め、バアル礼拝から遠ざかるだろうと思ったことでしょう。ところが、事態はそのように進みませんでした。アハブ王が王妃イゼベルに事の次第を知らせると、イゼベルはエリヤに使者を送り、こう言わせたのです。「わたしが明日のこの時刻までに、あなたの命をあの預言者たちの一人の命のようにしていなければ、神々が幾重にもわたしを罰してくださるように」(19:2)。それを聞いたエリヤは、恐れました。450人のバアルの預言者に勝利した高揚感もたちまち失われ、南に向かって逃げ出したのです。そしてエリヤはすっかり絶望し、自分の命が絶えることを願ったのでした。「主よ、もう十分です。わたしの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません。」(19:4)。そのエリヤに、主なる神はどう関わってくださったのでしょう?神さまは御使いをエリヤのもとに遣わされました。そして、焼き石で焼いたパン菓子と水を与えて言われました。「起きて食べよ」。「起きて食べよ。この旅は長く、あなたには耐え難いからだ」。そのような神さまの御言葉と御配慮に励まされて、エリヤは元気を取り戻して、40日40夜をかけて、神の山ホレブに到着します。すると主なる神は、山の中でエリヤと出会われようとされます。しかし、それは神さまがかつてモーセとホレブ山でお会いになった時とは、大きく違っていました。モーセの時には、ホレブ山全体が煙り、激しく震え、雷と稲妻に包まれた大音響の中から、神さまは語りかけられました。しかし、エリヤの場合には、激しい風の中に神さまはおられませんでした。地震の中にも火の中にも、神さまはおられませんでした。「火の後に、静かにささやく声が聞こえた」(19:12)とあります。神さまは、絶望からの回復途上にあったエリヤの弱い状態に合わせるかのように、静かにささやかれるという仕方で、エリヤに出会ってくださったのでした。神さまは私たち信仰者に、その時に必要なものを与えて、その状況にふさわしい仕方で、私たちを支え、励ましてくださいます。神さまのそのような恵み深いお取り扱いに我が身を委ねて、与えられた毎日を過ごしていきたいと思います。(2019年11月)