教会の言葉
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信仰の火を絶やさない
西宮中央教会 牧師 藤田浩喜
「主はヨシュアに言われた『今日から、全イスラエルの見ている前であなたを大いなる者にする。そして、わたしがモーセと共にいたように、あなたと共にいることをすべての者に知らせる』。」 (ヨシュア記3章7節)
今年のNHKの大河ドラマは、「軍師黒田官兵衛」です。今は家督を譲り受け、姫路城主になっています。私の牧師としての初任地は姫路伝道所でしたので、「姫路」、「御着」、「室津」などの地名が出てくると、とても親しみを感じます。また、周知のように黒田官兵衛はキリシタン大名でした。何回か前、かつての恋人を失った官兵衛が、悲しみを抱えた心で堺の街に赴いたという場面がありました。その中で彼は、魅き寄せられるようにキリシタンの礼拝の場へと足を踏み入れます。これはきっと、官兵衛が後にキリシタンとなることの伏線に違いないと思いました。これからどうなっていくのか、こちらの展開も楽しみです。物の本によると、黒田官兵衛はキリシタン大名であった、小西行長、荒木村重、そして高山右近などの影響で、キリシタンになったと言われています。しかし後に豊臣秀吉がキリシタンの禁教令を出すと、小西行長らと共にさっさと棄教してしまいます。そのことをどう評価するかは、なかなか興味深いテーマです。官兵衛は確かに、高山右近のように信仰のゆえにこの世の栄達を捨てた人ではありませんでした。彼は黒田家を守るために、キリシタンの棄教を宣告しなくてはならなかったのでしょう。しかし彼がキリシタンに入信したのは、かなり歳を重ねてからであったと言われています。また、彼は後に出家して黒田如水と名乗るのですが、この如水(じょすい)は旧約聖書のヨシュアから取ったと言われています。ポリトガル語でヨシュアの発音が似ていたので、この名前にしたと言われています。また、領地の居城であった福岡城の屋根瓦には十字架が刻まれていましたし、何人もの側室を持つことが通例であったこの時代、彼の妻は生涯「光」(てる)一人であったことも有名です。深慮の人であったこの人が、一旦決めたことを治世者の都合で易々と変えるとは考えにくい。表面上は棄教者を装いながらも、彼の信仰の火は最後まで燃え続けていたのではないでしょうか。幸い私たちは、キリスト者であることによって、彼のような厳しい局面に立たされることはありません。しかし圧倒的少数者として、どのように信仰の火を燃やし続けていくかが、私たちにも問われています。(2014年2月)